一般社団法人全国社会事業振興センター設立趣意書

 少子高齢化や核家族化の影響で、社会的弱者が増加する一方で、従来からそれらを支えてきた地域や家族の機能は著しく低下しています。また、これらを背景として、福祉・介護の分野においては利用者本意の質の高いサービス提供を目的とした介護保険制度や障害者自立支援法が施行され、国民の福祉サービスへの関心や期待が高まると同時に、サービス提供者である福祉・介護の人材確保が、重要な社会的課題となっています。これらを受け「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」(平成19年8月28日厚生労働省告示第289号)においても、福祉従事者の定着の促進を図るため「労働環境の整備の推進」を人材確保指針の一つの柱として掲げています。
 一方で、福祉人材の処遇の大きな柱である、退職金制度は、独立行政法人福祉医療機構が提供する社会福祉施設職員等退職手当共済制度において、平成18年度以降、民間とのイコールフッティングの観点から、介護分野における補助金がカットされ、掛金負担が高額になると共に、その影響から、これまで順調に伸びてきた加入者数にも陰りが見え、現行水準の給付を賦課方式で維持することが、将来的に難しい状況になりつつあります。
 これを受けて独自に退職共済制度を持っている都道府県等では、福祉医療機構の社会福祉施設職員等退職手当共済制度の受け皿となる制度を構築するなどの対応をしているものの、コストや規模の問題で未だ対応できていない場合や、そもそも独自の退職共済制度を持たない地域も全国的にあります。
 また、独立行政法人福祉医療機構が提供する社会福祉施設職員等退職手当共済制度は、加入対象者が社会福祉法人に限定されているために、規制改革により参入してきた社会福祉法人外の福祉・介護従事者や、地域社会の新たな担い手として、市民活動、地域活動を支える、民間非営利セクター従事者の処遇向上に寄与していない現状があります。
 そこで、広く福祉・介護や民間非営利セクターの人材養成・確保の為には、従事者の処遇の向上が不可欠であるとの観点から、退職年金共済事業を柱に、将来的に以下の事業を実施するために、一般社団法人全国社会事業振興センターを設立するものであります。

@社会事業を営む民間団体、または個人に使用される職員の退職年金共済に関する事業
A社会事業を営む民間団体、または個人に使用される職員の福利厚生に関する事業
B共済制度の課題解決に向けた調査研究等事業
Cその他この法人の目的を達成するために必要な事業

 なお、退職年金共済事業の開始に当たっては、制度加入勧奨・募集活動の対象として、以下の方針により行動するものとする。

@都道府県等を単位とした民間社会福祉事業従事者対象の共済制度が実施されていない地域における、社会福祉・介護分野の組織、ならびに、市民活動や地域活動を支えている民間非営利分野の組織。
A民間社会福祉事業従事者対象の共済制度実施団体が都道府県単位(政令指定都市単位を含む)で事業展開されている地域において、当該共済制度実施団体において、独立行政法人福祉医療機構の退職共済制度に加入していない従事者に対する受け皿制度として、本振興センター特定退職金共済制度によるサービス提供について、同意が得られた場合においては、その地域において、受け皿制度としての利用を希望される社会福祉・介護分野の組織。
B民間社会福祉事業従事者対象の共済制度実施団体が存在する地域において、当該実施団体の制度で加入対象外となっている民間非営利セクターの組織が、本振興センターの制度利用を希望した場合においては、その都度地域の共済制度実施団体と本振興センターで協議の上、取扱を決定する。

平成22年12月1日
新規法人設立と退職金制度創設に係る準備会